なぜ「厚い・薄い」でどんな時も?through Thick And Thinの語源を徹底解説
海外映画のクライマックスや著名人のスピーチ、あるいは洋楽の歌詞で一度は耳にしたことがある定番イディオム「through thick and thin」。直訳すると「厚いものと薄いものを通り抜けて」という不可解なフレーズですが、英語圏では「良い時も悪い時も」「どんな困難があっても」という固い絆や忠誠心を示す最上級の表現として愛され続けています。
人間関係の希薄化やコミュニケーションのデジタル化が進む2026年現在においても、心を通わせるパートナーシップや真の友情を語る上で欠かせない言葉です。なぜ「厚い」「薄い」という単語が人生の苦楽を象徴するようになったのか、その意外な語源のルーツからネイティブが使い分けるリアルな現場ニュアンスまで、一次情報をもとに徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「through thick and thin」の語源は中世英語の「鬱蒼と茂った深い森(thick)と木々のまばらな平坦地(thin)」を走破する過酷な旅に由来する。
- 要点2:単なる状況の浮き沈み(ups and downs)とは異なり、「何があっても相手を見捨てず寄り添い続ける」という強固な意志と忠誠心が宿る。
- 要点3:結婚の誓い(wedding vows)や創業メンバーへの感謝など、深い信頼関係を証明する特別な場面で圧倒的な説得力を発揮する。
【意味と語源の真相】なぜ「厚い・薄い」が「良い時も悪い時も」になるのか?
「thick(厚い)」と「thin(薄い)」という対極の形容詞が組み合わさったこのフレーズの正体は、「物事が順調な時も、極めて困難な試練に見舞われた時も変わらずに」という意味を持つ副詞句です。日本語では「山あり谷ありを共に乗り越えて」「雨の日も晴れの日も」「苦楽を共にして」といった言葉に相当します。
では、なぜ「厚い・薄い」が人生のアップダウンを意味するのでしょうか。その歴史は14世紀後半、中世イングランドの詩人ジェフリー・チョーサーが著した文学の金字塔『カンタベリー物語(The Canterbury Tales)』の時代まで遡ります。
当時の文献や語源研究の記録によると、この表現の原型は「through thicket and thin wood(茂みが鬱蒼と生い茂る森と、木々がまばらな森を抜けて)」という古英語の狩猟・旅路の描写路にありました。
中世の旅人にとって、木々が生い茂り足元が見えない鬱蒼とした森(thick)は、野獣や盗賊が潜む危険極まりない困難な道のりでした。一方で、木々が薄く視界が開けた場所(thin)は、見通しが良く安全に進める平坦な道です。旅人たちが「どれほど道が険しく荒れ果てていようとも、視界が良好で歩きやすかろうとも、目的地へ向かって歩みを止めない」という過酷な旅の情景が、時代を経て「人生のいかなる苦境や繁栄にあっても関係を維持し続ける」という比喩表現へと昇華しました。

【実態検証】ネイティブの生の声と現場目線で見えたリアルな使われ方
海外ドラマのワンシーンや著名人の回顧録、SNSのリアルな投稿を分析すると、ネイティブスピーカーがこの表現を使う際には共通した「感情の温度」が存在します。それは、単に事実として過去を振り返るのではなく、「泥臭い試練を一緒にくぐり抜けてきた相手への絶対的な敬意」を伝える場面です。
特に定番のコロケーション(連語)として頻出するのが、動詞「stand by」と組み合わせた「stand by (someone) through thick and thin」です。「相手が世間から非難を浴びている時や、経済的・精神的などん底にある時でも、決して見捨てずに味方であり続ける」という強い誓約を意味します。
例えば、長年連れ添った夫婦が銀婚式で語るスピーチや、破産危機を共に乗り越えたビジネスパートナーの手記、スポーツ選手が引退会見で家族やコーチに感謝を述べる場面などで、最も感情が昂る瞬間に選ばれるのがこのフレーズです。日常の軽い挨拶で乱発されることは少なく、ここぞという場面で人間関係の深さを証明するために使われています。
【徹底比較】「山あり谷あり・苦楽を共にする」類似表現との決定的な違い
英語には「良い時も悪い時も」に似たイディオムが複数存在しますが、ネイティブは文脈や関係性の深さに応じて明確に使い分けています。その違いを下表に整理しました。
| 英語表現 | 直訳と基本ニュアンス | 適した場面・使われる関係性 | 編集部の見解・使い分けのコツ |
|---|---|---|---|
| through thick and thin | 困難な時も平坦な時も支え合う(忠誠・覚悟) | 親友、夫婦、創業メンバー、生涯の恩師 | 関係性への「強い意志」が主軸。単なる状況説明ではなく感情の重みが最大級。 |
| ups and downs | 浮き沈み、人生の山あり谷あり | キャリア、市場動向、一般的な人生経験 | 客観的な「状態の変化」を指す名詞。忠誠心や絆の意味合いは含まれない。 |
| in good times and bad | 良い時も悪い時も(平易な表現) | 結婚の誓約(伝統文句)、公のスピーチ | 極めてストレートで格式高いが、比喩的な詩的ニュアンスは薄い。 |
| come rain or shine | 雨が降ろうと晴れようと、何があっても | イベント開催、約束の履行、日常のルーティン | 天候や外的事情に関わらず「行動を実行する」確実性を強調する際に使う。 |

【実践例文集】友情・結婚式・ビジネスで使える自然な言い回し
実生活やビジネスの現場でそのまま活用できる、実践的な例文をジャンル別にご紹介します。
1. 友情・家族への感謝を伝える例文(SNS・メッセージカード・手紙)
「She has been my best friend for over twenty years, supporting me through thick and thin.」
(彼女は20年以上の親友であり、どんな良い時も悪い時も私を支え続けてくれた。)
「True friends are the ones who stick with you through thick and thin, not just when everything is going well.」
(真の友人とは、物事がうまくいっている時だけでなく、苦難の時も変わらずそばにいてくれる人のことだ。)
2. 結婚の誓約・プロポーズでの例文(Wedding Vows)
「I promise to love you, cherish you, and stand by you through thick and thin for the rest of my life.」
(これからの生涯、順境の時も逆境の時も、あなたを愛し、大切にし、そばで支え続けることを誓います。)
3. ビジネス・チームビルディングでの例文
「Our core team stayed together through thick and thin, which eventually led to the successful launch of our project in 2026.」
(私たちのコアチームは幾多の苦難を共に乗り越え、結束を維持したことが、最終的にプロジェクトの大成功へとつながった。)
一般に知られていない盲点とネットの誤解
オンラインの英語解説記事やSNS上では、この表現に関して誤った解釈が散見されます。特に注意すべき3つの落とし穴を整理しました。
誤解1:状況そのものを「It was thick and thin」と表現できる?
これは完全な文法ミスです。「thick and thin」は名詞として「This company had thick and thin(この会社には山あり谷ありがあった)」のようには使えません。必ず「through thick and thin」のセットで副詞句として機能させ、動詞(stay, support, stand by, stick togetherなど)を修飾する必要があります。状況そのものを言いたい場合は「ups and downs」を使いましょう。
誤解2:語順を逆にして「through thin and thick」と言っても通じる?
通じません。英語のイディオムには固定された順序(不可逆連語)が存在します。「thick and thin」は歴史的・リズム的に固定化された慣用句であるため、語順を逆にするとネイティブには違和感しか残りません。
誤解3:ビジネスの初対面や形式的な取引先に使っても良い?
契約書や初対面のビジネスメールで使うのは過度にエモーショナルであり、不自然です。「何があっても裏切らない」という重い忠誠心を伴うため、数ヶ月〜数年の試練を共に乗り越えたプロジェクトメンバーや共同創業者に対して使うのが適切です。
【プロの結論】心理的バウンダリーと健全な関係性を見極める判断基準
社会心理学の観点から見ると、「through thick and thin」という言葉には、人間関係における「心理的コミットメント(情緒的責任)」が色濃く反映されています。
現代の家族関係や職場環境では、相手に無批判に従属し続ける「共依存関係」と、自立した個として支え合う「健全なパートナーシップ」の境界線がしばしば議論されます。この表現が真に美しい響きを持つのは、互いに「心理的バウンダリー(境界線)」を保ちつつ、相手の尊厳を守るために自らの意志で寄り添う覚悟がある場合のみです。
【この表現を使うのに向いている関係性】
- 過去に大きな失敗や困難を共に乗り越えた実績がある親友やパートナー
- 創業期の資金難やトラブルを共に耐え抜いたビジネスパートナー
- 利害関係を超えて生涯の絆を誓い合う結婚相手や家族
【慎重になるべき・避けたほうがよい関係性】
- 知り合って間もない知人や、SNS上の浅いつながり(感情が過剰に重く伝わるリスク)
- 形式的な利害関係のみで結ばれた一般的な取引先
- 一方が搾取される関係(「どんな時も支えるべき」という精神的束縛になり得る文脈)

【through thick and thin】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「through thick and thin」の発音のコツはありますか?
A1:英語の「th」の音が2回連続するため、舌先を上の前歯の裏に軽く当てて息を抜く「無声th音(/θ/)」をリズミカルに発音するのがポイントです。「スルー・スィック・アンド・スィン」のようにカタカナの「サ行」で平坦に発音してしまうと通じにくいため、音の強弱を意識しましょう。
Q2:アニメや映画の名言でもよく使われますか?
A2:はい、数多くの作品で登場します。例えば『ハリー・ポッター』シリーズにおける主人公3人の友情関係や、ディズニー作品で相棒同士が絆を再確認するセリフなど、命がけの試練を共にするキャラクターたちの合言葉として頻出します。
Q3:カジュアルな日常会話で使うと大げさに聞こえますか?
A3:決して大げさすぎることはありませんが、軽いランチの約束などで使う表現ではありません。誕生日メッセージ、送別会のスピーチ、記念日の手紙など、「節目となる場面」で日頃の深い感謝を伝える際に使うと、相手の心に強く刺さる表現になります。
まとめ:言葉の真意を理解して豊かなコミュニケーションを
「through thick and thin」は、単なる「always(いつも)」や「in any situation(どんな状況でも)」という言葉では言い尽くせない、「過酷な道のりも一緒に歩き通す」という歴史と覚悟が詰まった美しいイディオムです。
中世の鬱蒼とした深い森を抜けて現代に受け継がれたこの言葉のルーツを知ることで、英語の表現力は一段と深まります。大切な友人、家族、信頼する仕事仲間へ感謝や忠誠を伝える際には、ぜひその真意を込めてこのフレーズを届けてみてください。 (出典: through thick and thin(Yahoo!ニュース))